東京

新紙幣の見本も展示されている「日本銀行本店」見学ツアーに参加してきました。

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日本銀行本店本館

一般の人向けの見学ツアーが開催中

東京都中央区日本橋にある「日本銀行本店」では一般の人向けの見学ツアーが開催されています。事前に予約が必要ですが、参加費は無料。今回はその見学ツアーに参加した内容をもとに日本銀行本店本館の様子をご紹介します!

日本銀行本店本館の概要

  • 日本の重要文化財
  • 竣工:1896年
  • 設計者:辰野金吾

日本銀行本店本館は、日本近代建築の父と言われる建築家、辰野金吾による日本で最初の国家的近代建築です。辰野金吾は、東京駅丸の内駅舎を設計したことでも有名です。

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日本銀行本店本館の歴史

地名は「金座」から「日本橋」へ改名

現在、日本銀行本店が建っているこの地は江戸時代には「金座」と呼ばれ、小判などの金貨が製造されていた場所でした。「銀座」という地名は今も残っていますが、「金座」という地名は廃止され、この地は「日本橋」と改名されて今に至っています。

西洋建築技術を取り入れたデザインで設計

辰野金吾はイギリスやフランス、イタリアで建築を学びました。ベルギー国立銀行やイングランド銀行をはじめとする欧米の銀行をいくつも視察し、西洋建築技術を取り入れたデザインを完成させました。こちらは日本銀行本店本館の展示室に飾られていた設計図です。

そして1890年から1896年、6年の歳月を制作に費やして日本銀行本店本館は完成しました。石造による古典主義建築で、日本の近代建築を象徴するような建物でした。当時はまだ一般的ではなかったエレベーターやシャッターなどの先駆的な設備も備えられています。

1974年 国の重要文化財に指定

1923年の関東大震災にて、地震には耐えたものの火災によって1階の一部や2階ドームなどが消失。その後、辰野金吾の弟子である長野宇平治によって、耐久性を改良した復旧工事が行われました。そして1974年には明治洋風建築の貴重な遺構として、国の重要文化財に指定されました。

周囲を360度建物に囲まれた広場

現金が搬入されていたルートの名残

中庭に一歩足を踏み入れると、周囲を360度建物に囲まれた広場になっています。当時はここに地下金庫への現金搬入ルートがあったため、外から遮断された作りになっているそうです。今は地下金庫へのエレベータは塞がれて、お手洗いに改修されています。

柱や柱頭のデザインに注目

建物を支える柱は、いずれも岡山県産の北木石(花崗岩)が使用されています。よく見ると、1階の柱と2階・3階の柱はデザインが異なっています。1階部分は古代ギリシャのドリス式、2階・3階の柱はコリント式で柱頭部には装飾が施されているのが見えます。

中庭の扉の上部には日本のステンドグラスの創始者、宇野澤辰雄によるステンドグラスがはめ込まれています。ステンドグラスの色彩が、建物の色やデザインとよく合っていて素敵です。

建物の中央には銅板葺の丸いドーム

この建物の中央に銅板葺の丸いドームがあります。創建当時に存在したドームからは天井からの光が取り込まれ、2階の部屋へ光が届けられていましたが、このドームは関東大震災で消失してしまい、修復された後は飾り窓となってしまいました。

日本銀行本店本館を上空から撮影した写真

上の写真は展示室に飾られている上空から撮影した写真です。建物の中心に丸いドームがあるのが見えますね。

建物全体は上から見ると「円」という漢字に見える?!

そして、建物全体は日本の通貨である「円」という漢字に見えませんか?創建当時に使われていたのは「円」ではなく「圓」という古い漢字だったため、設計者が意図していた訳ではないそうですが…偶然にしても面白いですね。

その後の辰野建築においてドームは多用されました。東京駅丸の内駅舎にも意匠を凝らした見事なドームが設計されていますし、日本にいくつも存在する日本銀行の各支店でも同様の建築様式が採用されました。

こちらは北海道の小樽にある日本銀行の写真です。ドームが特徴的ですね。

馬車が使われていた名残の「馬の水飲み場」

日本銀行本店本館の中庭にある馬の水飲み場

中庭にある馬の水飲み場です。この建物が作られた当初は、馬車で荷物を運んできて積荷を下ろし、ここで馬や人々が休憩したのでしょうか。まだ車での移動が主流ではなかった時代の名残を感じます。

創建当初の姿を残した「地下金庫」

関東大震災でも被災がなかった高い耐久性

本館の地下金庫は、関東大震災での被災がなく、創建当初の姿をほぼそのまま残しています。壁面のレンガには、耐水性を高めるために白色の釉薬が塗られているそうです。

日本銀行本店本館の地下金庫
日本銀行本店本館の地下金庫の扉

本物と同じ重さ・大きさの札束と金塊

こちらは展示室に展示されている、本物のお札と同じ重さ・大きさの1000万円の札束です。1万円札が1000枚まとめられて紫色のテープで留められており、実際に持ち上げて重さを体感することができます。

日本銀行本店本館の地下金庫にある模擬券 1000万円

こちらは金塊のレプリカです。ゴールドの塊は想像以上に大きい印象でした。こちらも本物と同じ重さ・大きさのものが用意されており、実際に持ち上げることができます。

日本銀行本店本館の地下金庫にある金塊のレプリカ

こちらはお札を保管するための専用の箱。さきほどの1000万円の札束が1箱あたり20包入っているため、1箱で2億円になります。こんな大金、普段の生活ではなかなか目にすることがありません。

日本銀行本店本館の地下金庫にある模擬券 2億円

こちらには1億円が40包入ったコンテナが25台あり、総額1000億円分になります。ここに置いてあるのはすべてレプリカですが、日本銀行本店には実際に本物のお金がこうして管理されていると思うと、圧巻です。

日本銀行本店本館の地下金庫にある模擬券 1000億円

2024年度に発行された新紙幣(日本銀行券)

日本では2024年7月3日から、新しいお札(日本銀行券)が発行されています。決済のキャッシュレス化が進んでもお札の需要は根強く、お札の発行枚数は年々増加しているそうです。

新しいお札に印刷されるのは、このお三方。左から、一万円札は渋沢栄一、五千円札は津田梅子、千円札は北里柴三郎です。

2024年7月3日に発行される日本銀行券のサンプル
渋沢栄一(1840〜1931)

生涯に約500もの企業の設立に関与。実業界で活躍。教育・社会事業・民間外交にも尽力しました。

津田梅子(1864〜1929)

岩倉使節団に随行した最初の女子留学生の一人。女子英学塾(現:津田塾大学)を創立。近代的な女子高等教育の発展に尽力しました。

北里柴三郎(1853〜1931)

世界で初めて破傷風菌の純粋培養に成功し、破傷風血清療法を確立。ペスト菌を発見。私立伝染病研究所、私立北里研究所を創立し、後進の育成にも尽力しました。

日本銀行のWEBサイトによると、お札に印刷される人物の選定の基準は、偽造防止の観点からなるべく精密な人物像の写真や絵画が入手できる人物となるため、明治時代以降に活躍された文化人になっているそうです。

偽造防止技術「世界初の3Dホログラム」

万が一、偽造されたお札が出回ってしまうと、安心してお札を使うことができなくなります。そのため、今回の新しいお札では偽造防止技術「世界初の3Dホログラム」が採用されました。また、ユニバーサルデザインの観点から額面の数字が大きくなり、指で触れただけでもお札の種類が識別できるように種類ごとに異なる識別マークが入れられているそうです。

2024年7月3日に発行される日本銀行券の主な様式
2024年7月3日に発行される日本銀行券の偽造防止技術
2024年7月3日に発行される日本銀行券の偽造防止技術 英語

もちろん、今までに発行したお金も引き続き使うことができます。言い換えると、すでに発行が停止されたお札であっても(古いお札でも)額面通りの金額として使うことができるということ。今でも使えるお札は18種類あります。こちらのサイトに掲載されていますので、興味がある方は見てみてくださいね。

銀行窓口で使用されていた広間

2階まで吹き抜けの広々とした空間

ここは銀行窓口に面する客用広間で、「客溜(きゃくだまり)」と呼ばれています。2階まで吹き抜けの空間で2階の天井はガラス天井、その上はガラス屋根のため、天気の良い日は自然光がふんだんに入る明るい空間となっています。

日本銀行本店本館の客溜(客用広間)の天井
日本銀行本店本館の客溜(客用広間)の壁

美しい白い壁や柱には古典様式の精細な装飾が施されています。一部は関東大震災によって焼損してしまいましたが、その後に復元され、明治時代の姿を今に伝えています。

日本銀行本店本館の客溜(客用広間)の装飾についての解説
日本銀行本店本館の客溜(客用広間)の壁と柱

1階は広い待合いスペースになっており、銀行として営業していた際は記帳台が並んでいたそうです。2階の天井と外壁窓から差し込む自然光に加えて、当時は先駆的であった電灯照明も設置されています。

日本銀行の歴史や建築のこだわりを満喫

ツアー終了後は最初に通った中庭をもう一度通って、外へ。日本銀行の歴史や建築のこだわりや美しさを満喫できた時間でした。

日本銀行本店本館の中庭

申し込みは無料!日本語と英語のツアーあり

見学ツアーは日本銀行のWEBサイトから予約することができます。説明やビデオは原則として日本語で開催されていますが、一部、英語での見学回もあります。日本語以外で楽しみたい方は、英語回で予約しても良いかもしれません。

明治時代に日本が国家的プロジェクトとして推進した建築事業。ご興味がありましたら、ぜひ自身の目で見て確かめてみてくださいね。

日本銀行の近くにある「江戸桜通り」

春になると見事な桜が咲き誇る

日本銀行の近くにある「江戸桜通り」には桜並木があり、例年、3月下旬から4月上旬になると見事な桜を見ることができます。わたしが見に行った時は少し葉桜が出ていましたが、晴天と桜と新緑が見事なコントラストでした。

夜は桜色のライトアップも楽しめる

この「江戸桜通り」は夜になると建物も幻想的な桜色にライトアップされ、桜と建物が美しく照らし出されます。ライトアップ時期は桜の開花のわずかの時期だけ。タイミングが合えば、ぜひチェックして行ってみてくださいね。

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Ruby
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Web Designer / Photographer
東京在住、WEBデザイナー&フォトグラファーのRubyです。日本各地に出かけて心に留まったものを写真に収めています。 日本の美しさ、日本の素晴らしさをもっと世界に広めたい、そんな想いでブログを始めました。旅行の時にぜひ立ち寄ってほしい観光スポットや建築、カフェ、ホテルなどをご紹介します。
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