東京都渋谷区代々木にある緑豊かな100年の杜「明治神宮」
日本を代表する神社
明治神宮は、東京都渋谷区に位置する日本を代表する神社です。第122代天皇である明治天皇と昭憲皇太后を祀っています。1920年11月1日に創建され、以来、日本の精神的・文化的中心地として重要な役割を果たしてきました。
歴史と創建
明治天皇は1912年に、昭憲皇太后は1914年に崩御されました。両陛下の崩御後、国民の間から両陛下をお祀りし永久に敬い慕う願いが高まり、明治神宮の創建が決定されました。
明治天皇
明治天皇(1852-1912)は、日本の第122代天皇として1868年に即位しました。在位中、近代国家の基礎を築き、憲法制定や教育改革など多岐にわたる分野で近代化を推進しました。また、和歌にも秀でており、約10万首の和歌を残しています。
昭憲皇太后
昭憲皇太后(1850-1914)は、明治天皇の皇后として、女子教育の奨励や国際的な慈善活動に尽力しました。特に、「昭憲皇太后基金」を創設し、現在も世界の人道支援に貢献しています。皇太后も和歌を愛し、生涯で3万首以上の和歌を詠まれました。
創建の地として選ばれたのは代々木の地でした。この地は以前、皇室の所有地でしたが当時はほとんどが畑や荒れ地でした。
境内の特徴
鎮守の杜
明治神宮の最も特筆すべき特徴の一つは、約70万平方メートルに及ぶ広大な鎮守の杜です。この森は、神宮創建にあたって全国から献木された約10万本の樹木を植栽して造成された人工林です。現在では豊かな常緑樹林に成長し、「永遠の杜」を目指して造られた森は、都心にありながら豊かな自然環境が整った人々の憩いの場となっています。
フランスから献納されたワイン樽
明治神宮の参道には、フランスのブルゴーニュ地方から献納された約60個のワイン樽が展示されています。この奉納は2006年に始まり、毎年新しい樽が追加されてきました。
ワイン樽の献納には、以下のような背景があります。
- 明治天皇は西洋文化を積極的に取り入れ、特にワインを好んでいました。
- ブルゴーニュ東京事務所代表で名誉市民の佐多保彦氏の呼びかけにより、ブルゴーニュの醸造元各社から献納されました。
- 日本とフランスの文化交流と友好関係を深める象徴となっています。
樽には献納した生産者や畑の名前が記されており、ロマネ・コンティやシャンベルタンなど、有名なワイン生産者の名前も見られます。時間の経過とともに、木樽は趣のある色合いに変化しています。
これらのワイン樽は、明治神宮の自然豊かな環境と調和しながら、日本の伝統と西洋文化の融合を象徴する興味深い展示となっています。
日本各地から奉納された日本酒の酒樽
さきほど紹介したワイン樽と向き合うように、「菰樽(こもだる)」と呼ばれる神社へ奉納された日本酒の酒樽が並んでいます。ここ明治神宮には200個以上の菰樽が並んでおり、日本最大規模です。6段積みで、縦横に整然と並べられ各酒造元の特徴を表した意匠が凝らされています。
昔から日本では神事を営む際に神酒(みき)として日本酒が供えられ、ご祈祷が終わると参列者に振る舞われました。向き合うように並んだワイン樽と日本酒の菰樽は、明治天皇が西洋文化を好んで取り入れた「和魂洋才」の精神を象徴しています。
木製では日本一の大鳥居
南参道と北参道の出会い口にある「第二鳥居」は、木製では日本一の大鳥居として知られています。この鳥居の柱は直径1.2メートル、高さ12メートル、重さ13トンで、樹齢1500年を超える巨木で作られています。
参道をさらに進んでいくと本殿に通じる鳥居が見えてきます。
この鳥居をくぐって、さらに奥へ歩くと立派な南神門が見えてきます。
南神門をくぐると、広々とした石畳の空間に到達します。本殿はこの石畳の上に佇んでいます。
本殿
本殿は神社の中心的な建物で、明治天皇と昭憲皇太后をお祀りする場所です。厳粛な雰囲気に包まれ、参拝者の祈りを受け止める空間となっています。
本殿の脇には夫婦楠(めおとくす)と呼ばれる2本の木が植えられています。明治天皇と昭憲皇太后の仲が良かったことから、夫婦円満の象徴として親しまれています。
明治神宮では、日本天皇の象徴である「菊」が随所で使われています。日本では古来から菊は花の中で最も高貴とされ、花の形が太陽の形に似ていることから天皇の象徴となりました。
また「桐の紋」については、日本では政府機関に用いられる装飾の文様や菊紋の代用として用いられ、国家政府のシンボルのような役割を果たしてきています。
その他に神社の境内で目に留まるのはハートマークです。実は、これはハートマークではなく猪目(いのめ)とよばれる日本古来からある模様のひとつ。イノシシは山火事が起こると素早く逃げるため、それにあやかって火除けや魔除けを祈願する思いが込められているそうです。建築物にひそむ可愛らしい猪目をぜひ探してみましょう!
境内には人々の願いが書かれた絵馬も奉納されています。もともと絵馬は、馬を神社に奉献していたのがルーツです。馬を奉献することが難しくなったことから、馬やその他のものを木版に描いて奉納し、祈願するようになったそうです。
明治神宮ミュージアム
明治神宮の境内には明治天皇と昭憲皇太后ゆかりの品々を保存・展示するミュージアムが建てられています。
建築と設計
明治神宮ミュージアムは、世界的に有名な建築家・隈研吾氏によって設計され、2019年にオープンしました。建物は2階建てで、延床面積は約3,200平方メートルです。
最も特徴的なのは、緑豊かな神宮の杜と調和するようデザインされたゆるやかな勾配の屋根です。建物に入ると、まるで木立の中にいるかのような開放的な空間が広がり、訪れる人々を温かく迎え入れます。
皇室の歴史を紹介する収蔵品
明治神宮ミュージアムに収蔵されている品々は、かつて重要文化財に指定されている明治神宮宝物殿に納められていたものです。これらの明治天皇と昭憲皇太后ゆかりの品々を最新の設備で保存し、後世に伝えていくことが、このミュージアムの重要な使命となっています。
収蔵品は、明治天皇・昭憲皇太后が実際に使用された御物だけでなく、明治天皇が在位中に制作活動を奨励した画家や工芸家の美術工芸品なども含まれており、多岐にわたっています。これらは明治時代の文化や芸術、そして皇室の歴史を理解する上で極めて重要な資料となっています。
日本の文化と伝統を体感できる文化施設
明治神宮ミュージアムは、明治時代という日本の近代化が急速に進んだ時期の歴史や文化を学び、理解を深める場所です。また、明治天皇と昭憲皇太后の生涯や業績を通じて、日本の皇室の歴史や伝統に触れることができる貴重な機会を提供しています。
さらに、隈研吾氏による現代的な建築デザインと、明治神宮の豊かな自然環境が融合した空間は、訪れる人々に新しい博物館体験を提供しています。2階のロビーから眺める明治神宮の木々や参道の景色は、都心にいながら自然との一体感を味わえる特別な場所となっています。
明治神宮ミュージアムは、歴史的価値の高い展示品と現代的な施設設計が調和した、日本の文化と伝統を体感できる重要な文化施設です。明治神宮参拝の際には、このミュージアムを訪れることで、より深い歴史的・文化的理解を知ることができます。
施設情報
なお、ミュージアム内にレストランやカフェはありませんが、境内のフォレストテラス明治神宮で飲食が可能です。参拝の記念にぴったりな品が並ぶお土産売り場もありますので、興味がある方はぜひ立ち寄ってみてくださいね。
明治神宮での参拝と祈り
明治神宮は、初詣では例年日本一の参拝者数を記録しています。初詣以外にも結婚式、初宮詣、七五三などの人生での折々の節目、家内安全、厄払いなどの祈願まで、様々な目的で多くの人々が訪れています。
明治神宮は都心のオアシスとしても重要な役割を果たしています。約100年の歴史を持つ人工林は、都市における自然再生の成功例としても注目されています。
また、明治神宮は世界の平和を祈る場所として、今日も多くの人々を迎え入れています。都心にありながら豊かな自然に囲まれた静かな空間は、現代社会に生きる人々に安らぎと癒しを与え続けています。
明治神宮へのアクセス
アクセスはJR山手線「原宿駅」が一番近くて便利です。西口を出ると目の前に神社の鳥居が見えます。竹下通りや表参道方面の反対側ですのでご注意ください。
明治神宮
東京都渋谷区代々木神園町1−1
- JR山手線「原宿駅」より徒歩1分
- 東京メトロ千代田線・東京メトロ副都心線「明治神宮前駅」より徒歩1分
- 小田急線「参宮橋駅」より徒歩3分
- JR山手線・総武線・都営地下鉄大江戸線「代々木駅」より徒歩5分
- 東京メトロ副都心線「北参道駅」より徒歩5分